えっ・・何と50度!

フェリペU世大学・翻訳学部
PROFESOR  加 瀬  忠

 
日本では梅雨が長引き、今年は稲作等、農作物への悪影響が心配されておりますが、欧州では記録的な猛暑が続いております。6月の初旬に40度を超え、私が夏休みで日本へ一時帰国した7〜8月にはさらに上がって、マドリッドではついに50度を記録したそうですよ。
 
私の担当する翻訳学部の学生から、昨日(8月11日)、次のようなEメールでの驚きの便りが届きましたので、紹介します
 
Hi Kase sensei ・・。
 
Here in Spain we have got 52ºC in Sevilla and in Madrid 50ºC even 12 people have died because the high temperatures!
 
Now the temperatures have go down and now we have about 43ºC It´s better and from now on the temperatures will go down till september......how about Japan・・?」
 
「スペインではセビ―ジャで52度、マドリッドで50度を記録し、暑さのために12人の人々が死亡しました。今、温度は43度までに下がりましたが・・・日本ではいかがですか。(日本語訳 加瀬 忠)」
 
マドリッド通信82号「えっ!・43度」の記事でもお伝えしましたように、今年の欧州の暑さは大変なものです。スペイン、特にラ・マンチャ、アンダルシアの夏は例年40度を超え、暑さが厳しいのですが、今年は少し暑過ぎます。何でも150年で5度の暑さだそうですから。
 
8月12日付、日本経済新聞「春秋」欄でも、次のような記事が目に留まりました。
 
「旅先のマドリッドの街で、セ氏47度という気温の表示を見て一瞬目を疑ったことがあった。猛暑が続く欧州では・・冷夏で消費が低迷する日本と対照的な熱波の襲来が続いている。」

 
アンダルシアのフライパン
 
セビ―ジャ・グラナダ等の夏の暑さは、昔から「アンダルシアのフライパン」と言われ続けてきましたが、それではスペイン南部が、なぜ摂氏50度を超すような暑さになるのでしょうか。私はこのことに以前から大変疑問を感じていたものですから、少しその理由を調べてみました。
 
地図を見ていただくとわかるのですが、スペインの首都・マドリッドの緯度はおおよそ北緯40度ですから、日本の盛岡とほぼ同じ緯度に位置します。南部のグラナダ、セビ―ジャの各都市でさえも、日本の東京とあまり変わらない緯度なのです。
 
帝国書院編集部の発行する中学校社会科地図でも、スペインの気候は冬に雨が多く降る地中海性気候と包括されておりますし、私が日本の中学校で社会科・地理を教えていた頃も、欧州の気候区分は西岸海洋性気候と地中海性気候と教えてきましたので、スペインの夏の、雨の降らない厳しい暑さはとても不思議に思えるのです。
 
その理由は、大きく分けて二つ考えられるようです。
 
一つは、スペインのすぐ南は、地中海を渡ってアフリカのモロッコ、アルジェリア等の国々ですから、スペインはサハラ砂漠のすぐ近くです。何しろ、ジブラルタル海峡からモロッコまでは、おおよそ14キロメートルの距離で、スペイン寄りの展望台から背伸びをすればアフリカのモロッコが見えるのです。ですから、風がひとたび南風となれば、サハラ砂漠の熱風が直接吹き込んできます。こうなりますと、あっという間に、気温は10度くらい上昇してしまいます。これが理由のその一。そして二番目の理由は、アンダルシア地方の南にはシェラネバダ山脈等の大きな山脈が立ちはだかっており、そのため、グラナダ、セビージャ等の街は、盆地状態になった街になっている、とお考えいただくと理解しやすいかと思います。

 
メセータ大地
 
そして、スペインの気候を考える時には、この国全体が海抜650〜700メートルの高原状のメセータ大地となっていることを忘れることが出来ません。ですから、真夏の厳しい暑さの日でも、明け方から午前中は割合と涼しく、24〜5度まで気温が下がりますが、午後3時から5時、6時と温度が急上昇するのです。

               

                      
夕方いつもジョッキングで走るアランフェス王宮
                庭園。まっすぐに直線で約
4.5K。このプラタ
                ナスの緑に覆われた王宮庭園も、午後3時から4
                時には
40度を超える。

             

                   
アランフェスの中央を南北に走るカピタン通り。左側の建
              物は、私の勤務するフェリペU世大学・翻訳学部。あまり
              の暑さで、この緑陰に集う学生たちも少なくなってしまっ
              た。


 
美味しいビノが期待できます
 
厳しい熱波の欧州ですが、悪いことばかりではありませんよ。今年のビノ(ワイン)はエクセレントの「グラン・レセルバ」が期待できると思います。
 
ワインの出来具合は、その年の天候に大きく左右されます。よいワインは、よい葡萄から造られます。乾燥した気候と石灰質の良い土壌、そして照りつける太陽が糖度の高い良い葡萄を育てます。今年の夏のこの照り具合ですと、葡萄の糖度が12〜12.5%くらいの、ワイン造りには最高の葡萄が育っているはずですから、収穫の秋が待たれます。

              

                   
ラ・マンチャの葡萄畑。スペインでは、日本のようにぶどう
              を棚で育てるのでは
なく、収穫しやすいように、低く育てま
              す。乾燥した石灰質の畑と強烈な太陽が
糖度の高いぶどうを
              育てます。