マドリッド通信>41号

 オーラ ケ・タール?
 お元気ですか。9月に入り、スペインでは一気に秋の気配です。朝起きて温度計を見ると、18〜19度まで下がっています。一時帰国中の、あの日本の蒸し暑さを思いながら、スペインのメセータ大地(海抜600〜700mの高地)に感謝しています。
 スペインの現地校は9月2週まで夏休み中ですが、マドリッド補習授業校は、9月4日(土)に2学期の始業式を行い、順調にスタート致しました。

総合的な学習の時間
 日本の小・中学校で2002年度から本格実施される「総合的な学習の時間」、あれは、どの方向を向いているのでしょうか。日本へ一時帰国中に、大勢の昔の仲間と話をしたのですが、どうも私には良く先が見えないのです。大丈夫なのでしょうか。
 と申しますのは、私が今持っているセミナー・クラスでの授業のやり方が、「総合的な学習の時間」にかなり近いような気がするのです。検定教科書はなく、資料から教材・教具に至るまで全て自作です。学習指導要綱に束縛されない反面、事前の準備にかける時間とエネルギーは、はっきり言って膨大なものがあります。生徒指導、進路指導、部活動等に相当力を注いでいる中学校の先生が、さらに「総合的な学習の時間」に真剣に取り組もうとするなら、それはもう、物理的に個人のキャパシティーをはるかに超えてしまうような気がします。
 国際理解教育と言っても、情報教育と言っても、言葉の問題が相当障害になるでしょうし、実際に現状では、社会科と英語、理化と英語と言うような注文は、かなり高度な注文だと思うんですね。しかし、私の日本人学校時代の経験や、今、補習授業校で実施している国際理解教育や交流教育と言うことになると、その無理な注文に応じなければならないんですね。その無理なことが、日本の小・中学校の学校運営に支障をきたさなければいいが、と、日本の中学校長OBとしては、心配しているのであります。

世界陸上、女子幅跳び
 スペインのセビージャで世界陸上が行われましたでしょう。女子走り幅跳びの決勝、ご覧になりましたよね。スペインの女子選手が、最後に大ファールでイタリアの選手を逆転して優勝しましたね。あの跳躍は、世界の誰が見たってファールの跳躍です。あれだけ踏み切り板を出ているのですから。
 でも、審判員のあの髭のスペインのおじさんの目は、ファールじゃないんです。あれだけ踏み切り板を出ていることを承知していても、「Yoの目では、確かにセーフ」なのです。スペインの人は、あのぐらいのことは平気でやります。
 それでも、あれだけ堂々とホームタウン・デイスイジョンをやってのけるところが、また、この国の良さでもあるのですから、まあ、ビーバ・エスパーニャです。

日本とスペイン、どちらが住み易いか
 日本へ一時帰国中、何回も聞かれました。その都度、私は「勿論スペインですよ」と迷わず答えました。理由は、大きく分けて3つあげることが出来ると思います。

  1. 条例や規則など、生活上の最低限の決まりはあるのだが、その運用や読み方が、国をあげてゆるやかであること。おおらかな国民性。

  2. 物価が安いこと。日本の二分の一、ものによっては三分の一ぐらいであること。

  3. オーラ・アミーゴで明るく、親切なラテン気質。遊ぶことには熱心で、書類や仕事に対しては少々たるんでいても、人に接するときには実に親切で陽気な愛すべきスペイン人なのです。

 この国に住んで、「スペインが嫌いになった」という人は、私の周りではあまり聞かないですね。ただし、仕事の話は別です。これには、私も、ずいぶん泣かされていますから。でも、1,3と、能率的な仕事は両立しませんから。

日本、スペイン物価の比較
 私がスペインの方が住みやすいと思っている理由の2、スペインの物価について、マーケットで調べてみました。物価の比べ方には、いろいろとものさしがありますが、私は単純に、ある日のマーケットでの日西両国の物価(100ペセタ=75円で換算)としました。

品名 単位 価格(円) 品名 単位 価格(円)
1Kg 105 10個 150
牛肉 1Kg 600 牛乳 1リットル 85
豚肉 1Kg 375 ヨーグルト 小4個 160
鶏肉 1Kg 225 じゃがいも 1Kg 75
コーヒー 100g 320 玉ねぎ 1Kg 90
マヨネーズ 450g 50 にんじん 1Kg 135
ワイン 1本 750 トマト 1Kg 110
ビール 1缶 50 レタス 1個 65
1本 100 りんご 1Kg 180
ポカリ 1本 120 オレンジ 1Kg 75

 と言った具合です。もっとわかりやすく説明しますと、8月に一時帰国していたころ、8月に一時帰国したころ、私が好きなエンサラダ・ミクスタを日本で食べようとすると、たしかレタスが200円、トマトが100円、ビールが一缶200円ぐらいでした。これがスペインですと、レタス65円、トマト10円、ビールは50円ですよ。じゃがいもなどはキロで75円ですから、一個10円していません。スペインに住んで、いよいよ食べられなくなったら、じゃがいもをツマミにしてビールを飲んでいれば過ごせます。
 ああそう、パンを忘れていました。フランスパンの大きいのが一本35円ですから、私たちでもワインとパンで聖体を拝受し、黄泉の国へ旅立つことができるのです。
 ワインは上から下まで限りなく等級がありまして、私が一本750円として取り上げたのは、リオハのクリアンサと言う、スペインでは三番目の等級のワインです。一番上等なのは、リオハのグラン・レセルバ、それも82年もので、これですとやはり一万円ぐらい。次がリオハのレセルバの87年または91年か94年といったところです。94年は、私が前回マドリッド日本人学校へ赴任した一年目の年です。この年は、スペインでもとても暑い年でした。7月下旬から8月にかけて連日40〜43度の日が続いたのですが、これがブドウには良かったのです。おいしいワインが出来ました。あ、またワイン談義になってしまった。

トマトの香り
 一個10円のスペインの完熟トマト、ヘタをとると懐かしいほのかなトマトの香りがします。皮もかたく、一個を丸ごとかじると中身が飛び出して、鼻のあたまにかかります。小学校時代、学校から帰るとカバンを放り出して野原へ駆け出し、腹が空くと芋畑の境に植えてあったトマトをかじりました。あの時の、手についたトマトの香りが今でも思い出されます。
 スペインのトマトをかじっていると、そんなノスタルジックな子供の頃の思い出と重なるんですね。それにしても日本のトマト、あんなに柔らかでしたっけ。香りもほとんどないです。あれでは、ガスパチョも味が出ないかもしれませんね。

日本とスペイン、どちらが暑い?
 日本とスペイン、生活のしやすさを物価で比較してみましたが、夏の熱さはどうでしょうか。7月下旬から8月と、日本の夏、とても暑かったですね。この時期、ちょうど一時帰国で日本にいたものですから、「あれ、日本ってこんなに暑かったっけ」と、改めて日本の蒸し暑さを感じていました。
 単純に最高気温だけを比較してみますと、7〜8月のスペインは、40〜43度。日本では熊谷がいつも35〜36度でしたね。これですと、スペインの方が暑いわけですが、そうとも言いきれない面もあるんです。湿度ですよ。スペインの夏は、6〜8月とほとんど雨が降りませんから、湿度が20%ぐらいなのです。まあ、いくら湿度が低いと言っても、43度の直射日光はすごいんですが、それでもこの国は、石造りの家屋でしょう、日陰に入ると結構しのぎやすいんです。ところが日本では、朝、30度くらいですと、もう汗をかいてしまいますものね。
 8月に何回か、一番暑い日の午後4時頃に、10K走ると何リットル汗をかくかという、馬鹿なことをやってみました。約2リットルちかく汗をかいているようですね。同じことをスペインへ帰ってもやってみましたが、こちらは約500CCでした。
 結論ですけれど、私の感じでは日本の方がきついですかね。断定できないのは、汗を2リットルかいたあとのビールの味は、こちらに軍配ですから、まあ、何とも言えないところでしょうか。

メロン・コン・ハモン
 スペインの夏の味覚、メロン・コン・ハモン。だれが考えたのでしょうか。糖度の高い甘いメロンに、スペイン特産の生ハムを巻いていただくのです。メロンの甘さと、生ハムの熟成した塩味が何とも絶妙です。
 ハモン・セラーノ(生ハム)は、豚のモモ肉を塩づけし、特殊な室で発酵させ、さらに約2年間かけて熟成させます。火は一切使いません。このハモン・セラーノ、一番上等なものは、爪の黒いハモン・イベリコと言いまして、ドングリだけで育てた豚から作ります。
 スペインでは、おいしいメロンが10月ぐらいまで店に出まわっていますから、この時期にスペインにいらっしゃれば、おいしいメロン・コン・ハモンを味わっていただけます。