オーラ ケ・タール?
 6月に入り、マドリッドに強烈な夏の太陽が戻ってきました。スペインの四季は、年間を通して一番快適な春と秋が、あっという間に過ぎてしまいますから、ラ・マンチャの大地では、一年中照りつける太陽・ソルとソンブラの夏と、凍てつく厳しい寒さの冬だけのような感じがします。それでも今年は、昨年と同じように3月、4月と雨が多く降りましたので、今、我が家の前から線路沿いのパセオは、まだ満開のアマポーラで真っ赤です。

 EU統合で、欧州はどう変わるのか

 2,002年1月1日、ヨーロッパの国々では、今流通している各国通貨が、統一通貨「ユーロ」に切り替わり、EUの完全統合が実現します。ヨーロッパの国々が、それぞれの主権の一部を委譲して、一つの強固な統合体となるわけですが、それでは私たちの生活はどう変わるのでしょうか。自分がこれから生活してゆく国ですから、私はとても興味があります。
 
EUの国々には、それぞれ長い歴史と伝統のもとに独自の法律がありますよね。それら、各国の法律が、統合体としての共同体法に抵触した場合はどうなるのでしょうか。つまり、今のスペイン国内の法律がEUの法律に抵触した場合です。これが私の最大の疑問点ですが、これらについては「通商政策」「金融政策」等、いくつかの分野において、前記のように、EUは加盟各国から主権の委譲を受けており、この限りにおいては、EUの法律が国内法に優先するのです。
 それでは、財政とか外交とか、それぞれの国家の根幹に関わる分野についてはどうなのでしょうか。EU加盟国は、これらの主権までもEUに委譲し、完全なる「ヨーロッパ連邦」をめざしているのでしょうか。このことは、私の国家の概念をはるかに超えたところにありますし、まだ不透明な部分が多いのですが、EUに加盟するためには、厳しい五つのEMU経済収斂達成基準があり、物価・長期金利・為替相場・政府財政等でこれらの基準を達成していなければなりませんから、これ自体が、財政・外交等の分野で、加盟各国の著しい独走・個人プレーを阻止する抑止力になり得ると考えられます。
 私は、マドリッド通信57号で、当分の間、ヨーロッパを舞台にした戦争は起こらないのではないか・・と申し上げましたが、この厳しいEMUの経済収斂達成基準及び統一通貨「ユーロ」の流通自体が戦争抑止力となると考えるのです。過去の歴史の中で、ヨーロッパを舞台にした戦争は、自国通貨の増発でその戦費を調達してきたわけですが、統一通貨「ユーロ」の導入で、物理的にもそれが不可能になるからです。
 それでは、スペインで暮らす私たちの日常生活はどう変わるのでしょうか。人・もの・サービス・資本の移動が自由になり、統一通貨「ユーロ」が流通することによる日常生活の変化です。
 先ず人・もの・サービスの移動についてです。
スペインからフランス、ドイツ、イタリア等、EU加盟国への移動については、日本のような厳しい出入国管理令、為替管理令等に拘束されることなく、自由に移動が出来るようになりました。また、移動のための物理的な障害物もすべて撤去されましたから、陸路でも出入国検査を受けることなく、車で移動することが出来るようになったのです。EU域内の国々は、もう国内なのです。
 次に資本の移動が自由化されたことにより、スペインの銀行や、スーパーマーケットのような大型店、企業等の合併が目立つようになりましたね。さらに、このことの影響による市場での自由競争は、マーケットを活性化させ、物価に市場価格の原理が働き、需要と供給の原則による価格競争が加速しています。マドリッド通信でも何回かお伝えしましたように、ビール等はドイツビール、オランダビールの参入により、値下げ競争が激化しています。私のマーケットリサーチ・メモでも、このところ、日用雑貨、食料品、公共料金等でみる限り、スペインの物価は下がっています。ただし、原油価格の高騰によるガソリン価格等の値上げは例外です。

完璧と充実を象徴する
古代ギリシャの円を表している「
EU旗」
EU加盟国の観光客で賑わう
スペイン
一のデパート「コルテ・イングレス」

 対円との為替相場は、ユーロ導入直後の99年1月時点での1ユーロ=130円前後から、現在1ユーロ=105円前後でもみ合っていますが、ここ1〜2週間は、さらに円高基調で推移しています。
(2,001年5月28日 YahooJapan Finance調べ)
 EUの統合により21世紀の世界は、経済的に「米・日・EUの三極に収斂される」と言うのが私の持論ですが、統一通貨「ユーロ」の市場流通を目前に控え、スペインのマーケット・企業活動は活性化し、インフレーションの抑制効果、さらには雇用機会の拡大による失業率の低下等への著しい波及効果等がはっきりと統計数字に表れています。

 スペインのおいしいもの

 スペインで生活しておりましてね、ふと気がついたんですが、スペイン料理と日本料理って、すごく共通点があるような気がするのです。スペイン料理は、素材そのものの味を大事にしていますから、ああこれは何の料理というのがすぐわかるんですね。コチニージョ・アサド、トルティージャ(スペイン風オムレツ)、パエジャ、コシード・マドリレーニョ(マドリッド風煮込み)、皆そうです。
 スペインで料理を注文すると、必ずついてくるのがポストレ(デザート)です。私は、日本で生活していた頃、食後に甘いデザートを食べる習慣はなかったのですが、スペインで生活するようになって、食後の甘いポストレを食べることが楽しみになったのですから、食習慣と言うのは変わるものですねー。今日は、羊の乳、牛乳で作ったスペインの代表的甘いポストレ、ナティージャとクワハダを紹介致します。

クアハダ・コン・ミエル。
羊の乳を固まらせ、冷やして蜂蜜をかけて食べる。
ナティージャ。80%の牛乳と卵で固め、
シナモンを振りかけて食べる。

 クワハダ・コン・ミエル

 羊の乳を甘酸っぱく固め、よく冷やしてそのまま食べてもおいしいし、好みによって蜂蜜をかけて食べます。日本にはない、スペインの味ですが羊の乳ですから栄養万点、その上、甘くておいしいのですから、スペイン訪問の機会がありましたら、是非食べてみてください。

 ナティージャ

 見るからに玉子色で、食欲をそそりますねー。こちらは約80%の牛乳と20%の卵で固め、よく冷やしてシナモンを振りかけていただきます。冷たいナティージャの味とシナモンの香りのハーモニーは、40度を越えるラ・マンチャの夏の味覚です。

 スペインのポストレの特徴は、甘さにあると思いますね。日本では、今、甘さ控えめが流行しているようですが、戦後、甘いものが大変なごちそうの時代に育った私などは、このスペインの甘いポストレに、たまらないノスタルジアを感じているのです。

マドリッドの理髪師

ひとりごと

 ロッシー二の歌劇「セビリアの理髪師」は、学生時代に駅伝のトレーニングをしながら良く聴いたノスタルジック・サウンドです。マドリッド日本人学校へ派遣が決まったとき、いくつかの事が頭に浮かんでは消えたのですが、そのうちの一つが「セビリアの理髪師」のことでしたね。
 そして出会ったのが、マドリッドの床屋のおやじさんでした。もう、長いお付き合いなのですが、散髪をしてもらいながら聞く一言一言に、私は、私自身の人生観を考えてしまうような、含蓄のある話が多いのです。

仲良しの床屋のおやじさんと。
仕事場にあるのは、鏡と椅子だけ。
流しなどない。
店の入り口。
「紳士の理髪店」と書いてあるが、
理髪店のイメージとは遠い。

 写真をとったこの時間も、夕方6時くらいなのに、おやじさん「シェスタ」明けでご機嫌でした。そして「お前なー、働いたら休むんだよ。人生、今楽しまなくて、一体いつ楽しむんだね」と、いつもおやじさんの人生観を聞かせてくれます。
 今年のラス・ロサスの秋祭りも、おやじさん仕事をせずに、牛追いと闘牛で明け暮れるのでしょう。

アディオス 
カセ・スペインEメール kasespain@tocco.es