オーラ ケ・タール?
 スペインでは、ナバセラーダの山並みに沈む夕陽の美しい季節を迎えました。
 例年ですと、9月上旬のこの時期、まだまだラ・マンチャの強烈な太陽が照りつけているのですが、今年のスペインは、6月に入って間もなく40度を超えるような暑い日が続きましたので、季節の変り目が早く来たのかも知れません。
 マドリッド補習授業校では、9月1日()から2学期がスタートしましたが、児童・生徒の出席は半数程度、スペインではまだバカシオーネスが終っていないのです。

 人生・しなやかに生きるスペイン人

 2学期の始業式の出席率が50%前後、半数に満たないことなど、日本の小・中学校では考えられませんでしょう。
 私も長い間、日本の中学校で校長をしておりましたが、夏休み後半の時期は、9月1日の始業式に何を訓辞するかを考え、原稿をまとめるのが仕事でしたよ。もちろん、中学生が体育館にほぼ全員揃うことを前提にしてです。
 スペインの子供たちは、一体どこへ行っているのでしょうか・・・。
 そうです、バカシオーネスで海や山に出かけたまま、まだマドリッドへ戻っていない子が多いのです。

 シェスタとバカシオーネス

スペインの人たちのライフ・スタイルを語るとき、この二つを抜きにしてはそれをうまく説明出来ないと思います。
 バカシオーネスを楽しむ為に残り11ヶ月を働き、週末の土・日の為に月〜金を頑張り、一日を朝から晩まで働き通すのではなく、シェスタで心身共にリフレッシュする。家族を愛し、美しい故郷を誇りに思い、一日一日を楽しく過す。人生・しなやかに生きるスペインの人たちからは、何だか学ぶところが多いように思うんですね。
 私は今、年に2〜3回はスペインと日本を往復する生活をしております。
 この夏休みも、一時帰国で日本へ帰りましたが、日本へ帰りますと市役所へ行っていろいろな届の手続きをしますよね。日本の役所は、この煩雑な諸々の手続きの仕事を、てきぱきと見事に処理してくれるんですね。とにかく、速くて正確なんですよ。しかし、この迅速なサービスを支えているのは、シェスタも休暇もとらずに働いている担当者なのですね。
 バカシオーネスで長期休暇を楽しんでいる国から、有給休暇をとるのにも周りとのバランスを考え、気の毒そうに休んでいる国へ戻りますとね、「人生って・・一体何だろう」と考えてしまうんですよ。
 人生働くことが目的なのか、働くことは人生を楽しむための手段なのか。
 私の親しいマドリッドの床屋のおやじさんがいつも言っている「お前なー、人生今楽しまなくて、いつ楽しむんだね」の言葉が重く感じられます。
 人生・しなやかに楽しく、今が一番若いんですから。

 再びスペインの物価のこと

 日本へ一時帰国しておりましてね、マーケットへ買い物に出かけますでしょう。まあ、財布の中がすぐ軽くなってしまうんですね。日本は、カードが普及していませんから、その分お金の出てゆくのが早いんですが、それにしましても日本の物価は高過ぎます。
 スペインへ戻りまして、久し振りに近くのマーケットで買出しをしましたら、さすがにホットしましたね。缶入りビールを12本買って、600ペセタ(約350円)ですから。スペインのビールは、発泡酒ではありませんよ。おいしいビールです。   

後方から、オレンジ10個260円、オリーブ・オイル1L320円、シェリー酒のビナグレ1本245円、缶入りビール12本350円、手前左からヨーグルト4個145円、クワハダ2個115円、トマト10個150円、ナティ−ジャ2個70円。本日の買い物合計 1、655円(平成13年9月3日現在、為替相場 100ペセタ=65円で換算)

 オレンジはそのままで食べるよりも、生ジュースにして飲みます。毎朝2〜3個搾って飲むと健康に良いと思います。オリーブ・オイルは、エキストラ・バージンといいまして、オリーブの実の一番搾りです。
 このオリーブ・オイル、スペインの人たちは本当に良く使います。
 サラダにかけたり、パンにつけたり、料理はもちろんです。スペインの人たちにとってオリーブ・オイルには、特別の思いがあるようです。何しろこのオリーブ・オイル、古代ギリシャの時代から伝わっているのだそうですから。
 ああそう、スペインではどこのレストランへ行っても、ドレッシングはオリーブ・オイルとビナグレ()をセットにしたものしかありませんよ。日本のように、たくさんのドレッシングの中から自分の好みに合わせて選ぶと言う様なサービスはありません。

 学校の危機管理

 夏休み中に、所用で前任校へ出かけました。
 玄関を入ってすぐ、事務室の前に机が置かれていまして、来校者は氏名等をご記入下さい、とありましたので「マドリッド補習授業校 校長・加瀬忠」と記入しましたが、大変だなーと思いましたよ。大阪の池田小学校の児童殺傷事件の惨禍を二度と繰り返さないための方策を、それぞれの立場で今出来ることを、工夫・改善しているのですね。池田小学校では、「保護者にIDカードを配布する」との報道もありました。
 しかし私はね、関係者のご苦労に異論を唱えるつもりはありませんが、何か本質的なものが欠けているように思うんですよ。学校へ入り込んで、子供たちに危害を加えようと思っているような人間が、正常な感覚を持ち合わせているとは思えません。こちらが考えているような紳士的な方法では、どこからでも入り込んで、子供たちに襲いかかると思うんです。
 ではどうしたら良いのでしょうか・・。入れないようにするしか方法はないと思います。

ドリッド補習授業校は、学校の周囲を2メートル以上もの塀で囲い、出入りは、写真右手の正門からのみ。正門も、児童・生徒の登校後は閉じられる。

 私の勤務しているマドリッド日本人学校・補習授業校は、正門を閉じてしまうと、どこからも入れませんよ。
 正門の出入り口も、9時半以降は閉じてしまいますから、遅刻してくる子は中へ入れません。そこで、遅れた子は正門のブザーを押し続け、遅刻した旨をインターホンを通じて申し述べ、開けてもらうのです。正門を閉じてから遅刻してくる子は、ほとんどいませんけれどもね。
 朝と帰りの時間帯以外は全て閉じてしまって、学校運営等に支障を来さないか心配になるところですが、問題ないですね。
 いやー、もうヨーロッパの治安状態もひどいものでして、これくらいにしても狙われますから。

 安全と自由と水のコストは

 学校の危機管理、スペインやヨーロッパの治安を論じていて、ふと、学生時代だったかな、いや妻沼東中学校で社会科を教えていた頃かもしれない、たしか1、970年代の初めに、ユダヤ人のイザヤ・ベンダサンが書いたベスト・セラー「日本人とユダヤ人」を思い出しましたね。氏は書物の中で「日本人は安全と自由と水をタダだと思っている、世界でも希有な国民である」と喝破しましたが、当時は現実の生活と重なりませんでした。しかし今、ヨーロッパで生活をしてみて、ヨーロッパの国々は、安全と自由と水を確保することに対して、どれだけお金をかけているか、生活実感として理解することが出来ます。
 隣りの国、またその隣りの国と陸続きであるということは、移動に物理的な障害物がないわけですから、常に緊張状態の連続であるわけです。

こぼればなし

為替相場の不思議

 夏休みで日本へ帰る前、ペセタ・ユーロと円の為替相場は100ペセタ=65円、1ユーロ=107円(Yahoo Japanfinance調べ 平成13年6月28日)でした。
 そこで私は、日本からの外為送金は、夏休み明けにしようと思い、送金を止めました。バカシオーネス中の2ヶ月は経済活動も停滞し、生産性にも大きく影響しているはずのスペインと、有給休暇も一部返上して働いている日本の経済では、当然GDPに大きな差が出来、夏休み明けには、円がペセタ、ユーロに対してかなり反発していることを予想したのです。
 ところが何と、スペインへ戻って外為相場を検索してみると、相変わらず100ペセタ=65円なんですね。どうして休み休み働いている国と、休日も返上して一所懸命に働いている国との為替相場が変わらないのでしょうかねー。

カセ・スペイン Eメール kasespain@tocco.es
アディオス