オーラ ケ・タール?
 スペインでは街路樹のマロニエやプラタナスの木々の葉が風に舞い、夕方、学校から帰ってジョッギングをしていても、マドリッドの中心街やプリンセサ通り、我が家の近くのパルケ・デ・パリス公園などは、黄金色の絨毯を敷き詰めたようで、すっかり晩秋の風情を感じさせます。
 太陽と情熱の国スペインの厳しい冬将軍も、もうすぐそこまで来ています。

 ユーロ流通まであと二ヶ月

 EU統合に向けてのヨーロッパ各国の政治・経済等については、マドリッド通信第53号から8回にわたって連載いたしましたが、いよいよEU参加各国では、2002年1月1日から、統一通貨「ユーロ」が流通しますので、直前のヨーロッパをレポートします。世界で最も安定した通貨とドイツ国民が誇る「マルク」、18世紀の革命以来古い歴史と伝統を誇るフランスの「フラン」、イタリアの「リラ」、そして私が毎日使っているスペインの「ペセタ」もこの日で姿を消し、統一通貨「ユーロ」が市場に流通するのです。

新しい統一通貨「ユーロ」。紙幣は5ユーロ〜500ユーロの7種類
硬貨は1セント〜2ユーロまでの8種類が流通する。

 「21世紀の世界経済は、米・日・EUの三極に収斂される」と言うシナリオが私の持論なのですが、米・日の巨大経済圏に対抗するためのEU統合と言うこの壮大な試みも、統一通貨ユーロの流通を以て完結します。
 
ヨーロッパの国々は、時として私たちが考えてもみないような、とてつも無いことをやってのけてくれます。私は、今でも信じがたいのですが、戦争以外の方法で、自国の主権の一部を委譲することなど考えてもみませんでした。
 しかしその考えられないようなことを、これらの国々は、独・仏の普仏戦争や英・仏の百年戦争等、歴史的な国民共通の痛みを乗り越えて実現させてしまうのですから、指導者の懐の深さに感心してしまいます。

 市場規模の拡大・両替コストの削減

 さて、それではこの統合によってヨーロッパ社会はどのように変わるのでしょうか。
 先ず第一に「経済の活性化」と言う視点です。
 ヨーロッパの国々が、それぞれの国ごとに分断されていた経済を一体化し、市場規模を拡大しつつ、より厳しい市場価格の原理の導入を図りながら、金融政策は欧州中央銀行(
ECB)に一元化することにより、物価の安定を目指していると言うことです。
 私のメモによるスペインのマーケット・リサーチによりますと、電気・ガスなどの基幹産業料金の値下げによる影響は他の業種にも波及しており、これが追い風となって、ますます良い意味での価格競争が市場で顕在化しています。
 次に、これは旅行好きな私たちが直接享受出来る嬉しいことなのですが、両替コストの削減であります。ヨーロッパの国々を移動するたびに、出入国の空港でそれぞれの国の通貨に両替していた「為替手数料」がなくなるのです。私の試算では、少なく見積もっても5%は削減出来ると考えられますから、これはもう大変なものです。これによって、域内・外の貿易の促進も数字以上のものが期待できますし、今まではわかりにくかった域内各国との価格の比較が、比較的容易になったことによるメリットも見逃すことが出来ません。

 2002年1月1日

 さて、そのユーロが2002年1月1日からスペインをはじめ、参加各国間で流通し始めます。Xデーその後は、マルク、ペセタなどの各国の法定通貨は消滅してしまうわけですから、私が今持っているペセタはユーロに交換しなければなりません。
 そこで参加各国は、それぞれの国の通貨からユーロへの切り替えをスムーズに行うための切り替え計画を示していますが、スペインの場合は12月15日からユーロ硬貨を銀行などの窓口で販売を開始します。ペセタの法定有効期限は2002年2月28日で、その後、銀行などの窓口で交換を受け付けるのは、6月30日までとなっています。
 ユーロの硬貨は、1セントから2ユーロまでの8種類あるわけですが、それぞれの国が独自のデザインを施しても良いことになっていますので、個性豊かなユーロ硬貨になりそうです。
 
ちなみにスペインはカルロス国王、オーストリアはモーツアルト、イタリアはレオナルド・ダビンチが描いた「理想的な人体」を、ドイツは国のシンボルであるワシを描いています。通貨を統一する過程でも、ヨーロッパの国々の歴史、国民感情を最大限に尊重しているところはさすがです。
 
EU各国指導層のフレキシブルなこの対応の姿勢からは、学ぶところが多いのではないでしょうか。
 今、スペインのデパートや商店では、ペセタとユーロの二本立てで価格が表示されていますが、1ユーロは固定相場制で166.386ペセタですから、ユーロとペセタの換算には、当分の間、計算機を持って歩くようですね。一方、ユーロと円は変動相場制で、1ユーロが108〜9円前後でもみ合っていますので(2001.11.3日Yahoo Japanfinance調べ)、こちらはユーロ表示価格にゼロを二つつけていただければまあ、おおよその見当がつきます。

 サフラン祭り

 スペインを代表する料理と言えば、魚介類をふんだんに使った炊き込みご飯「パエジャ」が有名ですが、あのパエジャの輝くような黄金色の主役が実はサフランの雌しべであることは案外知られていないですよねー。
 このサフランの特産地が、マドリッドの南130
Kに位置する風車の街、コンスエグラなのです。コンスエグラの村では毎年10月のさいごの日曜日前後の3日間、サフラン祭りが開かれます。

コンスエグラ村の丘の上に並ぶ風車。
ドン・キホーテならずとも、思わず風車に向かって突進したくなる。

「日本のクロッカスに似た、サフランの可憐な花」 「摘み取られたサフラン」

 さて、早朝より村人が総出で摘み取ったサフランは、村の中心マヨール広場に集められ、サフランの雌しべ摘みコンクールが行われます。目の前に積み上げられたサフランの花から、ピンセットで雌しべだけを抜き取る早さと正確さを競うのです。この作業は、緻密さと経験と勘が勝負どころとなりますので、出場者はベテラン揃いとなります。

「さあ、コンクールの開始です。
サフラン
の雌しべをピンセットで抜き取る」
「サフランの女王はミス・ドルシネーアとは・・
さすがラ・マンチャです」

 アランフェス協奏曲

 スペインにはギターの名曲が数多くあります。
 「アランフェス協奏曲」「アルハンブラの思い出」などは、いつ聴いてもスペインの歴史、美しいスペインの風景そのものです。

「フェリペU世(1527〜1598)の時代から
静かなたたずまいを見せるアランフェス宮殿」
「アランフェス協奏曲の舞台となった
王宮の庭園とタホ川」

 ホアキン・ロドリーゴの名曲「アランフェス協奏曲」は、ここ、アランフェス宮殿の庭園を舞台に作曲されました。哀愁を帯びた第二楽章は、私達にもなじみが深いですよね。
 私の勤務する「フェリペU世大学・翻訳学部」は、アランフェス宮殿のすぐ近くにありますから、通勤でここを通ると、自然に「アダージオ・デ・アランフェス」を口ずさんでいます。

アディオス
カセ・スペイン
Eメール  kasespain@tocco.es