マドリッド通信−68

 
マドリッド補習授業校
  校 長 加 瀬  忠

 
オーラ ケ・タール? スペインでは、アマポーラ(虞美人草)の花が満開です。
 今年は、2月中旬から3月にかけて暖かな日が続き、雨も少し降りましたので一斉に花開いたようです。
 アランフェスの駅から、私が通勤で通る王宮付近の道々は、プラタナスの新緑とアマポーラの紅の絨毯で覆われ、ホアキン・ロドリーゴの「アランフェス協奏曲」をイメージするギターの旋律とタホ川のせせらぎとが重なり、ラ・マンチャのノスタルジック・サウンドとして語りかけてくるようです。

 セビージャの春祭り
 
過日、
M電器ロンドン駐在員のT君から「先生、セビージャの春祭り行かれますか?」と電話がありました。
 フィエスタ(お祭り)好きのスペイン人の間でも、バレンシアの火祭り、パンプローナの牛追い祭りとともに、スペインの三大祭りとして知られるセビージャの春祭り、日本人学校時代は時間がとれなくて、補習授業校時代は宿とカセータが取れなくて行けなかったお祭りですから、行くも、行かないもありません。勤務が大学にかわった今は、日程をやりくりさえすれば、こちらには問題がないのですから、即座に「よろしく頼むよ」と返事をしました。「ホテル、カセータの予約等、アテンド全ては現地駐在の社員にやらせますから」とのT君の返事。
 春祭りを一週間後にひかえた時期での話ですから、セビージャまでの交通手段をどうするか、AVE(スペインの新幹線)にRQを入れてみたら、こちらもOKとなりました。

                  

 
             フラメンコ衣装を着飾り、お馬車に乗ってフェリア会場へ。

 フェリア会場へ

 
グアダルキビル川を渡って、フェリアの会場に到着して驚きました。もうそこは飲めや歌えや、そしてもちろん踊れやの世界です。
 マドリッド通信でも何回かお伝えしておりますように、スペイン人のフィエスタ(お祭り)好きは大変なもので、その中でも、照り輝く太陽とオーラ・アミーゴの陽気な人々、そしてシェリー酒の産地として有名な南のアンダルシア地方の人たちは、祭りの楽しみ方が私たちとは違いますね。

                  

 
            フィエスタの期間中、フラメンコ衣装を身につけたセニョ
              リ
ータ、セニョールが「セビジャーナス」を踊り続ける。

 
正式には「フェリア・デ・プリマベーラ(春の見本市)」と呼ばれるこの祭り、名前からもわかるとおり、その歴史は、130年以上も前から開かれていたセビージャの「牧畜市」に端を発しているのですが、陽気で明るいアンダルシアのセビージャっ子たちは、これを飲めや歌えや、そして踊れやの春祭りに仕立ててしまったのです。
 今では、フィエスタの会場内に牛や羊などの家畜の姿はなく、スペインの伊達男たちがフラメンコ衣装で着飾ったセニョリータを馬に乗せてねり歩いているだけです。

カセータでセビジャーナスを踊り続ける
アンダルシアのセニョリータ。
伊達男にエスコートされ、馬上から
フェリア会場入りする可愛いニーニャ。

 今年の春祭りは、4月15日(月)の深夜から21日(日)まで、昼夜を分たずに催されました。私たちが訪れたのは、祭りも後半の19日(金)の午後、もう5日間も踊り続け、飲み続けているのですから、さすがのセビージャっ子も相当疲れているだろう・・と、思ったのが間違いでした。

 サンルーカル産のマンサニージャ

 
フェリア会場を案内してくれたのは、T君紹介のハイメさんとアルフォンソさん家族。カセータへ入るや、マンサニージャで乾杯。そして空になるとすぐに二杯目、三杯目、さしずめ「駆けつけ三杯」ってやつですよ。
 
このマンサニージャ、実はアンダルシア産の隠れた名酒でして、ヘレスの隣まち、サンルーカル・デ・バラメーダ産の辛口白ワインなのです。マドリッドでは、私もそうなんですが、どうしてもリオハの赤ワインを飲むことが多いんですね。ところが、さすがアンダルシア、ギンギンに冷やしたマンサニージャをぐっと飲む。つまみはもちろんハモン・セラーノと熟成したヤギのチーズ「ケソ・マンチェーゴ」なのですねー。当然ピッチが上がりますよ。

                 

 
            案内役を引き受けてくれた、ドン・ハイメ氏とアルフォンソ氏。
             左側、アルフォンソ氏が持っているのは「
REBUJITO

 この
後、延々と7時間飲み続けることになる。
 5日間飲み続けているはずのハイメさんなのですが、一向に疲れも見せず「Sr
.加瀬、次のカセータへ行こう」と、景気良くマンサニージャの「REBUJITO」を飲むんですねー。
 
一体、何軒のカセータを廻ったのだろう。会員以外はカセータの中へは入れないのですから、ハイメさんの顔の広さと、私が飲み続けている間、セビジャーナスを踊り続けている人々の行動体力に感心しながら、この祭りに費やすお金と時間と、そしてエネルギーは大変なものだろうな・・と、考えてしまいました。
 それでも、セビージャ及びその周辺の人たちが、これだけ思い切りよく財布をはたいてお金を使えば、スペイン経済に与えるその波及効果も相当大きいはずです。最後には、アンダルシアの人たち、と言うよりスペインの人たち全体が、国をあげて、キャッシュ・フローの概念をしっかりと身につけているのではないかと思わざるをえないような行動様式に、感心させられました。

 女の子が生まれると

 
これだけのお祭りにかける裏方の苦労話を、ハイメさんにお聞きしました。
 セビージャでは女の子が生まれると、最初のフェリアにはどんなデザインの何色のフラメンコ衣装を着せるかで、それはそれは大変なのだそうです。ハイメ家でも、両親はもちろん、おじいちゃん、おばあちゃん、親戚のおじさん、おばさんまで出てきてけんけん、がくがくだったそうです。 それで、衣装のお値段の方も結構なものでして、5〜10万前後で、上は天井知らずと言ったところでしょうか。

                 

 
             セニョリータ、ニーニャ・・それぞれ美しいフラメンコ衣装
               に身を包んで、さー、踊り明かすぞ。

 
セビージャのスペイン広場
                      


 
マドリッドをはじめ、スペイン各地には「プラサ・デ・エスパーニャ(スペイン広場)」がありますが、私はマドリッドより、セビージャのスペイン広場(写真)の方が美しいと思います。