マドリッド通信−96

 −中学校長夫妻のスペイン生活−

 5月29日(土) 天気晴れ、気温38度

 アランフェスの春祭り。エンシエロ(牛追い)が9時からなので、早めに朝食を済ませる。朝食は、いつもパン、野菜サラダと牛乳かスモ・デ・ナランハ(オレンジ生ジュース)。オレンジは、メルカド(市場)へ買出しに行くと、5キロで4〜5ユーロ(520〜650円)で売っている。毎朝スモ・デ・ナランハを搾るのは、私の当番。食後にエスプレッソのコーヒーを妻と飲む。

 午前9時ちょうど、花火の合図でエンシエロ(牛追い)開始です。市役所横のスチュアート通りからアルミバール通りへ抜けて街外れの闘牛場まで、6頭のトロスを追い込むのです。このエンシエロ(牛追い)、へミングウェイが「日はまた昇る」の中で、スペイン北部パンプローナの街のエンシエロをリアルに描いていますから、ご存知の方も多いと思いますが、足自慢の若者は柵の中へ入り、トロス(牡牛)の尻尾や角を触りながら、闘牛場へ追い込むのです。約半トンもあるトロスですが、足は早いですよ。
 このエンシエロ、私もマドリッド日本人学校時代はラス・ロサスの街に住んでいましたので、当時は中へ入っていましたが、アランフェスの街に住むようになってからは、足に自信が無くなり、もっぱら柵の外で勇敢なアランフェスの若者たちに声援をおくることにしています。

 エンシエロが終って午後1時過ぎ、春祭りに招待したマドリッド在住のJ社駐在員M氏ご夫妻と共にレストランテ「カサ・ホセ」で昼食。このレストランテは、特にフォアグラ料理の美味しいレストランテとして知られているのです。
 
日の闘牛開始時刻は午後7時です。王宮近くの我が家から闘牛場までは歩いて15分。チケット購入の時間も考え、運動着に着替えて6時前に家を出ました。5月の下旬だと言うのに、街中の温度計は38度をさしています。半袖・短パンでも暑いくらいです。闘牛場のチケット売り場は予想通り長蛇の列。最後尾に並んで順番を待ったのですがが、運良く「ソンブラのアバホ(日陰席の前列下)」が15ユーロ(約1950円)で購入出来ました。ちなみに、闘牛場の入場券は、ソル(日向席)、ソル・イ・ソンブラ(半日陰席)、ソンブラ(日陰席)とありますが、それぞれ値段が異なります。もちろん、ソンブラ(日陰席)が一番高いのです。闘牛を見ていていつも感ずるのですが、闘牛士は命がけです。今日も、二番目のマタドール(闘牛士)が、牡牛の角にかけられ倒されてしまいました。午後9時、闘牛が終了。闘牛場から我が家まで、街を大回り(約8キロ)して距離をかせぎ、走って帰りました。

 
5月30日(日) 天気晴れ、気温38度 引き続きアランフェスの春祭り。セセーニャ村に住むマノロさん、アンヘラさんご夫妻を招いて、日本の「カツ丼」をご馳走する予定です。妻は、数日前からメルカド(市場)へ行って、霜降りのセルド(ぶた肉)の美味しいところをひとかたまり、約1キロを3.5ユーロ(約455円)で買ってきて、保存していました。スペインでは、日本の「天ぷら、フライ」の元祖である「ぺスカド・ア・ラ・ロマーナ(魚の天ぷら)、ぺスカド・ア・ラ・バスカ(魚のフライ)」がありますが、やはり、日本のトンカツとは味も、歯ごたえも違います。日本のトンカツのようにやや厚く切った豚肉を、パン粉でからりと揚げた味が、スペイン人に受け入れられるか、興味津々です。

 午後1時少し過ぎ、マノロさん、アンヘラさんご夫妻がお見えになりました。午後1時の約束で、1時を少し回ったところで来てくれるスペイン人は希です。この国では、約束時間の20〜30分遅れ、時に1時間遅れは日常的ですから。
 さて、妻はかなり厚く切ったセルドをからりと揚げ、日本のカツ丼のように玉葱、卵を醤油と砂糖で味付けをして仕上げました。この甘辛い醤油味と柔らかくふっくらと炊いたご飯の微妙なおいしさが、バターとパン、コーヒーの食生活の人たちにわかってもらえるのか、妻は心配そうでしたが、カツ丼、みそ汁、そしてポストレ(デザート)として出した羊羹、緑茶も、皆平らげてくれました。ただし、緑茶には砂糖をかなり入れて飲んでいました。緑茶の味は、まだわかっていないようです。

  5月31日(月)天気晴れ、気温38度
  起床5時半。私の担当する講座は、午後1時から講義が3時間、ゼミナールが2時間です。午後1時の講義開始に合わせて、昼食を12時過ぎにとるので、起床・朝食も早くなるのです。10時過ぎ、日本経済新聞と午後の講義の資料を抱えていつものバルへ。濃いカフェ・コルタード(エスプレッソ・コーヒー)を注文し、ラテンの早いテンポの音楽とスペインの人たちの甲高い会話と喧騒の中で新聞を読み、講義の構想を練るこの時間と空間が、私の好きな一時です。

           

                 JAPONES
−Wの授業は、時に「のり巻きの作り方」等、体験
           的な学習で日本文化を
学んでいます。「総合的な学習の時間」
           の大学生版といったところですね。本日の講師は、妻が担当し
           ました。

 
私の住んでいるピソは、王宮横のイサベルU世公園近く、ゴベルナシオン通りの4番地です。勤務するフェリペU世大学までは歩いて10分程で、途中アランフェスの街で一番大きなメルカド(市場)の中を通ります。今日も12時半過ぎに家を出てメルカドをのぞきました。お目当ては、ひいきの魚屋さんと主人のアルベルトさんです。人込の間からのぞくと、あるある・・マグロの大トロ。夕食の料理が楽しみです。

 
JAPONES−U、Wは、学生数23名。授業は当番の学生の号令で「起立」「礼」「着席」と、あいさつをしてから始めます。スペインの学生たちは、小・中学校、高校時代に、このようにそろって挨拶をするというような経験が無いために、最初は戸惑っていましたが、最近は「JAPONES−U、Wは武士のようだ」と、案外評判がいいのです。講義中の私語、携帯電話はもちろん禁止、質問は手を上げてはっきりと・・等、授業規律はかなり厳しくしていますが、はみ出す学生はいません。今日の講義は「ハイテク先進国日本の経済力・技術力」をテーマに、トヨタのハイ・ブリッドカー「プリウス」、キャノンのプリンター・インクジェット24、松下のDVD 録・再機、プラズマディスプレイ等、他国の追随を許さない、知的付加価値の高い優れた製品の数々について取り上げたのですが、このあたりの講義になりますと、どうしても一ヶ国語だけでの説明では難しいですね。スペイン語、英語そして日本語での解説が必要になります。

 
午後4時、講義終了。この後、研究室で学生とのゼミナールでしたが、本日のテーマそのものが、東洋の神秘なる国日本への関心の高さとの相乗効果があったのか、活発な質疑応答の場となりました。
 午後6時過ぎ、ゼミナール終了。帰りはメルカド(市場)でマグロの大トロひとかたまりとメロンを買って帰りました。マグロの大トロは、1キログラムくらいのかたまりで4ユーロ(520円)、メロンは、ラグビーの・ボールのような形の大きなものが2ユーロ(260円)ですから、スペインの物価はとても安いです。

 午後7時、王宮庭園一周のジョッギングに出発。カピタン通りの温度計にチラッと目をやると、まだ37度です。マドリッドやアランフェスの街では、その日の最高気温をしばしば午後4時〜5時に記録します。そのわけは、スペインでは今サマー・タイムで時間を一時間進めている上に、さらにグリニッジ標準時よりも、5度も西に位置するのに、パリやローマ等、他のヨーロッパ諸都市と時刻を合わせているためなのです。
 
水分の摂取をよほど早め、早めに行わないと、脱水症状になってしまいます。

 王宮庭園は、大回りで一周すると約10キロ、島の庭園一周は6キロで、その日のコンディションと気分でコースを決めています。
 
夕食のマグロ料理は、いつものように私の出番です。黒マグロやメカジキの大トロは、ビノ・ブランコ(白ワイン)ではなく、ビノ・ティント(赤ワイン)が良く合うんですねー。リオハのマルケス・デ・カセレスの94年ものか、ファウスティーノのグラン・レセルバ、94年で間違いないと思います。

 

  マグロの大トロの話

  スペインの人たちも、マグロやタコ、イカ、ひらめ等、魚料理が大好きです。メルカド(市場)へ行きますと、カツオもマグロも「ボニート」「アトゥン」と言ってほぼ一緒に扱われています。スペイン各地に出回っているこのマグロ、実は日本でもおなじみの大西洋上に浮かぶカナリア諸島のラス・パルマスがマグロ漁業の基地なのです。
 スペインの人たちのマグロの食べ方は、私たち日本人と大分違います。刺身で食べたり、醤油味で煮付けたりしません。
 従って、一番美味しいベンテレスカ(大トロ)の部分の需要はあまりないようで、メルカドでは、いつも隅の方へ押しやられています。私は、その大トロの部分をかたまりで買ってきて、美味しく料理していただいているのです。
 ラぺ(あんこう)の食べ方もマグロの大トロと同じで、一番美味しい「アン肝」や黒い皮の部分は食べずに、捨てられてしまっているのですから、何とも「もったいない」食文化の違いを感じさせられます。

 


                   
             アランフェスのメルカド(市場)内の魚屋さん。マグロ、ひらめ、
           ドラダ(黒鯛)
鮭、メルルーサ、タコ、イカ、えび等種類も豊富で
           新鮮。買った魚は、客の
R Q に応じて目の前で調理してくれます。

  6月1日(火) 天気晴れ、気温39度
  アランフェスの春祭りが終了し、街に静けさが戻りました。今日は、妻のセビジャーナス教室の日です。マドリッドのスタジオで、カスタネットとセビジャーナスを練習しているのです。アランフェス駅発10時の電車に乗るために、駅まで車で送りました。
  帰りに郵便受けをのぞくと、B 銀行から、銀行振り込みにしている家賃、電気、水道料金等の書類が届いていました。
 我が家の生活費は、月々どのくらいかかっているのでしょうか。
  2004年5月分
  家賃563ユーロ(73190円)、電気代40ユーロ(5400円)、水道代36ユーロ(4680円)、ガス代43ユーロ(5590円)、新聞代139.5ユーロ(18135円)、その他に食費がかかりますが、スペインは日本に比べて物価が安いので、出費が少なく、とても生活しやすい国です。